二兎を追う」で未来を掴む!『両利きの経営』で会社も自分もアップデート

bizteach
Conclusion
この記事の結論・要点
  • 今の事業を深める「深化」と、新しい種を探す「探索」を同時に回すのが絶対条件
  • 過去の成功体験に縛られる「サクセストラップ(成功の罠)」から抜け出す
  • 新規事業は既存事業から「構造的に分離」し、経営トップが繋ぎ合わせる
  • 矛盾する2つの組織をまとめるには、感情に訴える「共通のビジョン」が必要
  • 会社だけでなく、個人のキャリアやスキルアップにも「両利き」の思考が使える

毎日の業務、本当にお疲れ様です。 目の前の仕事に追われながら、ふと立ち止まって「今の会社のビジネスモデル、このままで本当に5年後も生き残れるのかな?」と不安になることはありませんか?

特に、中小企業の現場で日夜奮闘されている方や、部門間の調整に追われる管理職の方であれば、既存事業の売上を守りながらも、新しいことに挑戦しなければならないというプレッシャーを痛いほど感じているかもしれません。

ですが、 今日ご紹介する経営理論の世界的名著『両利きの経営』は、そんな「今の安定」と「未来の成長」の間で引き裂かれそうになっている私たちの悩みに、とてもクリアな答えを出してくれます。

チャールズ・A・オライリーとマイケル・L・タッシュマンという二人の教授が提唱したこの理論は、単なる机上の空論ではありません。 変化の激しい現代において、企業が生き残り、そして私たち個人がどうキャリアを築いていくべきかを示す、極めて実践的なサバイバルガイドです。

カフェでコーヒーでも飲みながら、一緒にこれからの「賢い戦い方」について考えていきましょう。

なぜ今、「両利きの経営」が必要なのか?

まず、この本が一番伝えたいメッセージ、それは「知の深化」と「知の探索」という二つの活動を同時にやり抜きなさいということです。

少し難しい言葉が出てきましたが、安心してください。日常の例に置き換えてみましょう。

たとえば、あなたが長年愛されている「老舗のラーメン店」を経営しているとします。 毎日スープの味を微調整し、仕入れコストを1円でも安く抑え、スタッフの動きを効率化して回転率を上げる。 これが「知の深化(Exploitation)」です。

今の事業の強みを磨き上げ、競合他社との差別化を図り、今日の利益を最大化する活動ですね。 企業が生きるための「足腰」を作る、非常に大切なプロセスです。

一方で、 「ラーメンという枠にとらわれず、全く新しい健康志向のスイーツを開発してみる」とか、「海外向けに冷凍のデリバリー事業をゼロから立ち上げてみる」といった活動。 これが「知の探索(Exploration)」です。

まだ見ぬ未来の顧客や、全く新しい技術、未知の市場を積極的に探しに行く活動のことです。 成功するかどうかは誰にも分かりませんし、一時的には赤字になるリスクも抱えています。

ここで少し考えてみてください。 あなたの会社は今、どちらの活動に時間とお金を使っているでしょうか?

おそらく、9割以上のリソースが「深化」、つまり既存の事業を少しでも良くすることに使われているはずです。 それは決して悪いことではありません。今日の給料を稼ぎ出しているのは、間違いなくその既存事業だからです。

しかし、 世の中のニーズや技術がガラリと変わってしまった時、「深化」しかしていない組織は、時代の波に飲み込まれてしまいます。 だからこそ、右手で今の利益をしっかり稼ぎ(深化)ながら、左手で未来の種を蒔く(探索)、「両利き」であることが求められるのです。

言われてみれば、毎日の仕事は「今の業務の改善」ばかりで、新しいことを考える余裕なんて全然ないかも…。
🤔
多くの企業が陥る「サクセストラップ(成功の罠)」

「新しいことをやらなきゃいけないのは分かっている。でも、なかなか踏み出せない」 これが、多くの経営陣やリーダーのリアルな本音です。

なぜ、頭では分かっていても「探索」ができないのでしょうか。 本書では、この現象を「サクセストラップ(成功の罠)」と呼んで警鐘を鳴らしています。

企業は一度大きな成功を収めると、その成功体験があまりにも強烈なため、同じやり方を繰り返そうとします。 「今のやり方で儲かっているんだから、わざわざリスクを冒してよく分からない新規事業に手を出す必要はない」という心理が働くのです。

たとえば、社内で新しいアイデアが出たとしても、 「それって今の主力製品と競合しない?」 「どれくらいの利益が見込めるの? 確実なデータを出してよ」 と、既存事業の厳しい物差しで測られてしまい、結局アイデアが潰されてしまう。

あなたも、そんな場面に遭遇したことはありませんか?

既存事業が成熟し、利益を生み出している時こそが、実は一番危険なタイミングです。 過去の成功という甘い蜜に酔いしれ、「探索」を怠った結果、気がつけば全く新しい技術を持った新興企業に市場をごっそり奪われてしまう。 これが、サクセストラップの恐ろしさです。

この罠を回避するためには、「自社の成功を常に疑う」という、ちょっと痛みを伴う冷静な視点が不可欠になります。

イノベーションを生む「構造的両利き」という解決策

では、具体的にどうすれば「深化」と「探索」を両立できるのでしょうか。 同じ部署の中で、「午前中は既存事業の効率化をして、午後は新規事業のアイデア出しをしてね」と言われても、人間の頭はそんなに器用に切り替わりません。

なぜなら、求められるルールが全く違うからです。 既存事業(深化)は「ミスなく、効率的に、計画通りに」進めることが正義です。 しかし、新規事業(探索)は「失敗を恐れず、柔軟に、とりあえず試す」ことが正義になります。

これを一つのチームに押し付けると、必ず摩擦が起きます。 そこで本書が強く推奨しているのが、「構造的両利き」という組織デザインの手法です。

これは、新しい事業を創出する部門を、既存事業の部門から「構造的に切り離す」というやり方です。 物理的にオフィスを分けたり、レポートライン(上司への報告ルート)を別にしたりして、新しいチームが古い慣習やルールに縛られずに自由に動ける環境を作ります。

ですが、 ただ「隔離」すればいいというわけではありません。 完全に切り離してしまうと、今度は自社の持っている強力な資産(ブランド、顧客リスト、技術力)を新規事業で活かせなくなってしまいます。

ここで重要になるのが、「現場レベルでは分離しつつ、経営トップのレベルでは強固に統合する」という絶妙なバランスです。 経営陣が橋渡し役となり、新規事業チームが必要とするリソース(お金や人材)を、既存部門から引っ張ってこれるように支援するのです。

矛盾を乗り越える「リーダーシップ」と「ビジョン」

さて、この「構造的両利き」を実践しようとすると、社内では必ずと言っていいほど大げんかが始まります。

既存事業のメンバーからすれば、 「俺たちが血みどろになって稼いだ利益を、まだ海のものとも山のものとも分からない新規事業に突っ込むなんて許せない! こっちのボーナスを増やせ!」 と思うのは当然の感情です。

この部門間の強烈な対立を調整し、一つにまとめるのが、経営トップやリーダーの最大の仕事になります。 ここで求められるのが、「共通のビジョン(パーパス)」の提示です。

「なぜ、私たちはこの相反する二つの事業を同時にやらなければならないのか」 「我々の企業としての本当の存在意義は何なのか」

リーダーは、ただ数字の目標を掲げるだけでなく、従業員の感情に訴えかけるような熱いストーリーを語らなければなりません。 過去の成功体験だけにすがるのではなく、「未来の挑戦」も包含した新しいアイデンティティを組織に根付かせる必要があるのです。

そして、幹部チームの結束力も試されます。 各部門のトップが自分の部署の利益だけを主張していては、組織は崩壊します。 リーダーは客観的な視点でリソースを配分し、新規事業がすぐに成果を出せなくても、長期的な視点で粘り強く支援し続ける覚悟が求められるのです。

なるほど…。新しいことをやるには、仕組みだけじゃなくて、それを支える「リーダーの熱意」や「ブレない方針」が絶対に必要なんだな。
😊
成功と失敗を分けた企業のリアルな事例

理論だけではイメージしにくいかもしれないので、ここで具体的な事例をいくつか見てみましょう。

両利きの経営:成功事例と失敗事例

【良い事例:富士フイルムの劇的な変革】 本業である写真フィルム市場がデジタル化によって消滅の危機に瀕した際、彼らはただコスト削減(深化)に走るのではなく、自社が長年培ってきた「コラーゲン技術」や「ナノ技術」を全く別の分野に応用しました。医療機器や化粧品(アスタリフトなど)という未知の領域へ果敢に「探索」を進め、見事に事業の柱を転換させました。まさに両利きの経営を体現した素晴らしい事例です。

【良い事例:Amazonのあくなき探索】 Amazonはオンライン書店としての圧倒的な物流・販売システムを「深化」させながらも、自社のサーバー運用ノウハウを外部に提供するAWS(Amazon Web Services)という全く新しいクラウド事業を「探索」しました。今やAWSは、同社の利益の大部分を稼ぎ出す巨大な柱に成長しています。

【悪い事例:統合に失敗するケース】 一方で、新規事業の専門部署を作ったものの、既存事業からの冷ややかな視線に耐えきれず孤立してしまうケース。あるいは、短期的な利益を求める株主や経営陣の圧力に屈し、数年で「探索」の予算を打ち切ってしまい、結局ジリ貧になっていく企業も数多く存在します。

日本企業、特に大手や歴史ある企業ほど、既存の仕組みが完成されすぎているため、新しい一歩を踏み出すのが難しい傾向にあります。 だからこそ、意図的に仕組みを壊し、新しい風を入れる組織文化の醸成が急務なのです。

人事・評価制度はどう変えるべきか?

「よし、うちの会社も新規事業部を作ろう!」と意気込んでも、人事制度や評価の仕組みが古いままでは、誰も新しい挑戦をしてくれません。

考えてみてください。 「新規事業を任せるけれど、失敗したらボーナスはカット、出世の道も閉ざされるよ」と言われて、喜んで手を挙げる人がいるでしょうか?

既存事業のメンバー(深化)に対する評価は、売上目標の達成率やコスト削減額といった「短期的な業績」で測るのが適切です。 しかし、新規事業のメンバー(探索)に対して同じ物差しを使ってはいけません。

探索活動においては、「どれだけ早く失敗から学び、軌道修正できたか」という学習能力や俊敏性を高く評価すべきです。 「失敗を許容し、そこから学ぶ」という組織文化を根付かせない限り、イノベーションは絶対に生まれません。

さらに、既存部門と新規部門の間で定期的な人材交流を行ったり、共通のプラットフォームで情報共有を行ったりすることで、社内のシナジー効果を最大化する仕組みづくりも、人事や経営陣の重要な役割となります。

明日から、自分の仕事でどう「両利き」を使うか

ここまで、企業や組織の大きな枠組みについてお話ししてきましたが、この『両利きの経営』の考え方は、私たち個人の働き方やキャリア形成にもそのまま応用できます。

「会社が両利きになってくれないからダメだ」と諦めるのではなく、まずはあなた自身が「両利きのビジネスパーソン」になることから始めてみませんか?

今の担当業務で専門性を極め、確実に成果を出す(個人の知の深化)。 これは、会社からの信頼を勝ち取り、自分の足場を固めるために絶対に必要です。

しかし、それだけで満足してはいけません。 休みの日に異業種の人と交流してみる、自分の業務とは全く関係のない最新のAIツールを触ってみる、あるいは興味のあった副業に少しだけ手を出してみる。 こうした活動が、あなた自身の「知の探索」になります。

明日から試せる「個人版・両利きの実践」

1. 時間のポートフォリオを見直す 業務時間の「80%」を今の仕事の効率化(深化)に使い、意識的に「20%」を新しい情報収集や全く別のスキルの学習(探索)に割り当ててみる。

2. 自分の「サクセストラップ」を疑う 「ずっとこのやり方で褒められてきたから」という過去の成功体験を一度リセットし、「もし今、ゼロからこの業務を任されたらどう進めるか?」と考えてみる。

3. 失敗の定義を変える 新しいことに挑戦して上手くいかなかった時、それを「ミス」ではなく「この方法ではダメだと分かったという重要な学び(学習)」と捉え直す。

日々の業務は本当に忙しく、新しいことに目を向けるのはエネルギーが要ります。 ですが、 少しずつでも「探索」の種を蒔き続けることで、数年後、あなた自身の市場価値は驚くほど高まっているはずです。

変化の激しい時代を生き抜くために。 会社も、組織も、そして私たち自身も、「今」を力強く生き抜きながら、「未来」の可能性にワクワクできるような、そんな「両利き」を目指していきましょう。

明日からのあなたの仕事に、少しでも新しい視点を取り入れるヒントになれば嬉しいです。

参考資料

両利きの経営(Ambidextrous Organization)――「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く|チャールズ・A・オライリー/マイケル・L・タッシュマン

・本の長さ 512ページ
・言語 日本語
・出版社 東洋経済新報社
・発売日 2022/6/24

経営コンサルタント 櫻井
経営コンサルタント 櫻井

最後まで読んでいただきありがとうございました。

この本の他にも、「仕事で使えるビジネス名著・実践レビュー」には、あなたのビジネスのヒントになる名著を揃えています。今の悩みに効く一冊をぜひ探してみてください。

また、より具体的に「組織における、集客・採用・教育の悩みを、WebやAIの力で解決したい!」とお考えの方は、これより先のサービス紹介もぜひご覧ください。貴社の成長を加速させる「実践」へと変えるお手伝いをさせていただきます。

お気軽にどうぞ

お仕事の相談

相談は無料
Googleフォームからお願いします

お得な情報

導入相談LINE

クーポン配布
各サービスの
特典など

無料相談(Googleフォーム)
記事URLをコピーしました