なぜ「使いにくい」は起きるのか?『誰のためのデザイン?』に学ぶ、ビジネスと日常を変えるデザインの秘密

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Conclusion
この記事の結論・要点
  • 使う人の「当たり前」を徹底的に観察し、理解することが出発点
  • 良いデザインは「発見可能性」と「理解」の両方を備えている
  • ユーザーの「メンタルモデル」と製品の仕組みをピタリと合わせる
  • ミスは人のせいではなくデザインのせいだと考え、システムを改善する

毎日の業務、本当にお疲れ様です。

ふと立ち止まると、「せっかく導入したシステムなのに、誰も正しく使ってくれない」と頭を抱える瞬間はありませんか?

あるいは、 お客様から「この画面、どこを押せばいいの?」と頻繁に問い合わせが来て、対応に追われてしまう。

競合他社との差別化に悩み、少しでも便利な機能を詰め込もうと必死になる。 特に、中小企業の現場で働く方や、新規事業を任された管理職の方であれば、痛いほど共感できる悩みかもしれません。

ですが、 今日ご紹介するドン・ノーマンの著書『誰のためのデザイン?』は、そんな私たちの常識を根底から覆してくれます。

この本は、単なるデザイナー向けの専門書ではありません。 明日からの仕事の進め方や、お客様への向き合い方がパッと変わるような、とても実務的なお話をさせてください。

使う人の「当たり前」を理解する

著者のドン・ノーマンは、認知科学者であり、デザイン界のレジェンドと呼ばれる存在です。

彼が本書を通じてずっと訴え続けているのは、人間中心設計という考え方です。 つまり、システムやモノを作る側の都合ではなく、実際に使う人のことを一番に考えよう、というシンプルな原則です。

デザインで最も重要なのは、作り手が「きっとユーザーはこう動くはずだ」と勝手に決めつけないことです。

実際にお客様はどのような環境で、どう考え、どう行動するのか。 それをよーく観察して理解することこそが、すべてのキモになります。

たとえば、 飲食店で新しい券売機を導入したとします。

作り手は「画面が大きくて高機能だから便利だろう」と思うかもしれません。 一方で、 お腹を空かせたお客様は、ただ「いつものラーメン」を早く注文したいだけなのです。

多すぎるボタンや複雑な画面遷移は、かえってお客様を混乱させてしまいます。 使う人の「当たり前」に寄り添うこと。 それが、ビジネスを成功に導く第一歩になります。

確かに、高機能なツールを導入しても、結局いつも使う機能は一つだけだったりしますよね。
😊
「見てすぐわかる」「使ってわかる」デザインの法則

良いデザインには、外せない2つの柱があります。 それが、発見可能性と「理解」です。

発見可能性というのは、見てすぐわかる状態のこと。 たとえば、初めて訪れたオフィスのドアの取っ手を見ただけで、「あ、これは押すんだな」とか「手前に引くんだな」と直感的にわかることです。

そして「理解」とは、使ってわかる状態のこと。 その道具が何をするためのものか、どう操作すれば目的が達成できるかが、スッと頭に入ってくる状態を指します。

これらをビジネスの現場やプロダクトで実現するために、ノーマンはいくつかの強力な「デザインのルール」を教えてくれます。

まず一つ目が、アフォーダンスです。 少し難しい言葉に聞こえるかもしれませんが、要するに「物の形が、使い方を教えてくれる」という性質のことです。

たとえば、 平らなプレートが付いたドアは、私たちに「押すこと」をアフォード(提供)しています。 取っ手が付いていれば「引くこと」を教えてくれますよね。

次に大事なのが、シグニファイアです。 これは、アフォーダンスだけでは伝わりきらない時に添える、具体的なサインや手がかりのことです。

ドアに小さく「押す」と書かれたプレートや、スマートフォンの画面で「ここをタップできますよ」と光るボタン。 これらがシグニファイアとして働き、ユーザーを迷わせません。

そして三つ目が、マッピングです。 これは、操作するスイッチと、実際に動く対象との関係性が、自然でわかりやすいことを意味します。

四つ目は、フィードバックです。 ボタンを押した時に「カチッ」と音が鳴ったり、画面に「送信完了しました」と表示されたりすること。 「ちゃんとあなたの操作を受け付けましたよ」と、システムが返事をしてくれる機能です。

もし、 エレベーターのボタンを押してもランプが点灯しなかったら、何度も連打してしまいませんか? 適切な返事がないと、人は不安になり、結果的にシステムへの不満に繋がってしまうのです。

「なるほど!」と思わせる頭の中の仕組み

私たち人間は、初めて見るモノに触れるとき、無意識のうちに「これはたぶん、こうやって動くはずだ」という予測を立てます。

この頭の中にある予測図のことを、専門用語でメンタルモデルと呼びます。 良いデザインとは、ユーザーの頭の中にあるメンタルモデルと、実際の製品の仕組み(概念モデル)を、ピタッと一致させるものです。

パソコンのデスクトップ画面を思い浮かべてみてください。 画面上に「ゴミ箱」のアイコンがあり、不要なファイルはそこにドラッグして捨てる。

これは、私たちの現実世界にある「紙くずをゴミ箱に捨てる」というメンタルモデルを見事にデジタル上で再現した例です。 だからこそ、直感的に操作できるわけです。

逆に、 この二つのモデルがズレていると、お客様は「なんで思い通りに動かないんだ!」とストレスを感じてしまいます。

お客様の頭の中を想像し、そこに合わせてサービスの仕組みを設計し直すこと。 それこそが、選ばれる理由を生み出す鍵になります。

ミスをしない、ミスから立ち直れるデザイン

仕事中や日常生活で、「あ、また間違えちゃった。自分はなんて不注意なんだろう」と落ち込むことはありませんか?

ですが、 ノーマンは力強く断言します。「それはあなたのせいじゃない。デザインが悪いのだ」と。

人が犯すミスには、大きく分けて二つの種類があります。 一つは、無意識のうちに間違った行動をしてしまうスリップ。 もう一つは、状況の解釈そのものを間違えてしまうミステークです。

これらを総称してヒューマンエラーと呼びますが、優れたデザインは、そもそもミスが起きにくいように作られています。

ここで活躍するのが、制約という考え方です。

たとえば、 USBケーブルをパソコンに挿すとき、裏表が逆だと物理的に挿さらないようになっていますよね。 あるいは、 電子レンジは、ドアが完全に閉まっていないとスタートボタンを押しても作動しません。

このように、あらかじめ間違った操作ができないように物理的、あるいは論理的な制限をかけておく。 これが制約の力です。

それでも万が一、エラーが起きてしまった場合には、ミスから立ち直るための手厚いサポートが必要です。 「元に戻す(Undo)」ボタンがあるだけで、どれだけ私たちが安心してパソコン作業を行えるか、想像してみてください。

良い事例と悪い事例の比較

【悪い事例:ノーマンのドア】 引っ張るための立派な取っ手が付いているのに、実は「押す」ドア。 これはノーマンのドアと呼ばれ、シグニファイアとアフォーダンスが矛盾している最悪の例です。

【良い事例:ガスコンロのつまみ】 4つのバーナーが四角く並んでいるのに対し、手元のつまみも同じように四角く配置されている。 どのつまみを回せばどの火がつくか、直感的にわかる完璧なマッピングの例です。

自分が不器用なわけじゃなくて、モノの形が間違っていたんですね!ちょっと救われた気分です。
😊
ビジネスや現場での実践的な応用

ここまでお話ししてきたデザインの法則は、決してプロダクトデザイナーだけのものではありません。

私たちの毎日の仕事にも、めちゃくちゃ役立つ考え方ばかりです。 たとえば、自社のウェブサイトやアプリを見直すとき。

お客様が迷わずに商品を買えるように、購入ボタンの色や位置をわかりやすくする。 問い合わせフォームの入力項目を必要最小限に絞り、エラーが出たときは「どこが間違っているか」を優しく赤字で教えてあげる。

これらはすべて、顧客体験を向上させるための人間中心設計の実践です。

そして、 お客様に対してだけでなく、社内の従業員に向けたシステム作りでも全く同じことが言えます。

経費精算のシステムが使いにくければ、月末に経理担当者への質問が殺到し、チーム全体の生産性が落ちてしまいます。 「マニュアルを読めばわかるはずだ」と突き放すのではなく、マニュアルがなくても操作できるデザイン思考を取り入れる。

そうすることで、 社内の無駄なコミュニケーションコストが削減され、本当に価値のある仕事に時間を割けるようになります。

会社全体で「使う人の気持ち」を真剣に考える文化が根付けば、自然とお客様が本当に求めている潜在ニーズを汲み取れるようになります。 これこそが、他社には絶対に真似できない、最強の競争力へと繋がっていくはずです。

よくある質問(FAQ)

ここで、現場でこの考え方を導入しようとする際によくいただく疑問を整理しておきます。

Q1. デザイナーではない普通の営業や企画職でも、この考え方は使えますか?

もちろん使えます。 企画書一枚のレイアウト、お客様へ送るメールの文章構成、会議のアジェンダ作り。 これらすべてが「読み手(ユーザー)にどう伝わるか」を設計する立派なデザイン行為です。相手のメンタルモデルを想像することが出発点になります。

Q2. 新しいシステムを導入したのですが、社内から不満ばかり出ます。どうすればいいですか?

まずは現場の声を「クレーム」としてではなく、貴重な「フィードバック」として受け止めてください。 社員がどこでつまずいているのか、実際の操作画面を見ながら観察(行動の分析)することから始めましょう。マニュアルを増やすのではなく、システム側の制約やシグニファイアを見直すのが根本的な解決策です。

Q3. お客様の要望をすべて聞いていたら、機能が複雑になりすぎませんか?

とても鋭い視点です。 要望をそのまま機能として追加するのではなく、「なぜその要望が出たのか」という本当の課題を探ることが重要です。不要な機能を引き算し、最もコアな価値を磨き上げることこそが、真の意味でのユーザー視点と言えます。

明日から自分の仕事でどう使うか

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

ドン・ノーマンの『誰のためのデザイン?』が教えてくれるのは、単なる画面の作り方ではありません。 私たちの周りの世界の見え方を変え、仕事の質を劇的に引き上げるための、強力な武器になる考え方です。

最後に、実務への応用として、明日からすぐ試せる具体的なアクションを整理しておきましょう。

明日から試せる3つのアクション

1. 日常の「使いにくい!」をメモする ドアの開け間違いや、アプリの押し間違いなど、自分の小さなミスを観察し、「なぜ間違えたのか」デザインの構造を疑う癖をつける。

2. 相手の「当たり前」を想像して資料を作る 社内会議の資料やお客様への提案書を作る際、相手がどこに注目し、どう解釈するか(メンタルモデル)を予測してレイアウトを見直す。

3. 「戻る」仕組みを用意する 新しい取り組みや業務フローをチームに提案する時、失敗してもすぐに軌道修正できる安全網(制約とフィードバック)をあらかじめ組み込んでおく。

あなたの関わるプロジェクトや毎日の業務のなかに、まだ誰も気づいていない改善のヒントが必ず眠っています。 ぜひ、デザインの力を使って、働く人もお客様も、もっと快適でワクワクするような体験を創り上げていきましょう。

参考資料

誰のためのデザイン?(The Design of Everyday Things)――ドン・ノーマン

・本の長さ 520ページ
・言語 日本語
・出版社 新曜社
・発売日 2015/4/23

経営コンサルタント 櫻井
経営コンサルタント 櫻井

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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